米大統領選の行方を左右するのはデジタルエリートか!?

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米大統領選、共和党の指名候補争いでは、どうやらドナルド・トランプ氏が抜け出しそうな勢いですが、民主党の方は、大本命と見られたヒラリー・クリントン氏に対し、バーニー・サンダース氏が一歩も引かない意外な展開が続いています。

サンダースは無所属議員で、既存組織の支援はなく、大口献金者もいない。それでも人気が衰えず、健闘しているのはなぜなのか。

思い立って、サンダース氏のソーシャルメディアを覗いてみました。前回ブログ記事でほんのちょっと触れましたが、8年前の大統領選で、オバマ氏が当初、優勢と見られたクリントン氏を破って民主党の指名を勝ち取った一因はソーシャルメディアの使い方が上手かった、とされているからです。

さらに、その10年前のミネソタ州知事選で、当初は泡沫候補とされていたプロレスラーで二大政党に属さないジェシー・ベンチュラ氏が、インターネットとメールで若者に働きかけて小口資金とボランティアを3千人を集め、大逆転で当選した故事を思い出したからです。なんだかサンダース氏に立場が似ているし・・・

数時間、Facebookはじめ、Twitter、Instagram、Tumblrを覗いてみた印象は、サンダース陣営は有権者の気持ちを掻き立てるのが極めて上手い、ということです。まるでワンフレーズで国民の耳目を集めた小泉純一郎元総理のようでもあります。

まず、Facebookですが、2つのアカウントがあります。一つは「U.S.Senator Bernie Sanders」で、もうひとつは陣営の「Bernie2016」というもの。「友達」数は、前者が320万、後者が290万ほどです。紛らわしいので前者をA、後者をBとします。

どちらも頻繁に投稿されるのですが、この記事を執筆時にAに「4時間前」と表示されるポストのひとつが「1963年、シカゴ警察に逮捕される若き日のサンダース」という写真です。Bにも日を違えてアップされています。

スクリーンショット 2016-02-25 11.41.36

これは、シカゴトリビューンの2月22日付けの記事から転載したものですが、その記事を読んでも、なぜこの写真がトリビューンのアーカイブから取り出され、ニュース扱いになったかが分かりません。たまたま「アセテートのネガが見つかった」とあるだけ。そして、この写真は、逮捕される背景となった小学校の人種差別への抗議行動を説明する23日付けの記事で、再度、使われます。

伝わるのは、サンダース青年は半世紀も前から、社会正義のためにーーこのケースでは人種差別ーー権力と闘ってきたというメッセージです。これについた「いいね」は4時間で2.5万件、シェアは4,500件、コメント640件という数字です。

そして、不思議なことにBには記事の日付けより1日早い21日にアップされているのですが、こちらの「いいね」は6.2万件、シェア1.3万件、コメント1711件です。

で、時を違えず、なぜか、ショートビデオニュースを日々配信するNowThisから昨日「Bernie Sanders was arrested at a Civil Rights protest in 1963」と題する1分20秒のミニドキュメンタリーが私のタイムラインに届きました。

この番組の終わりの方に、サンダースの発言がテロップで出て来ます。こうです。「injustice is something that I have always fought throughout my life」(不正義と私は人生を通して常に闘ってきた)ーーなんともカッコイイ。

その視聴数は今現在400万回を超え、シェアは5.8万、「いいね」は4.3万件、コメントも2千件近くで、例えば最初にあるコメント「バーニーは半世紀も前から今日まで闘い続けている。驚くべきことだ。彼が指名を受けられるように手助けしよう」に1,700件近くの「いいね」が付いていますが、その他の2,000件近くのコメントにもそれぞれ千件から2千件ほどの「いいね」が付くという凄まじい反響ぶりです。

新聞記事への突然の「若き日のサンダース氏逮捕写真」といい、そのビデオを使い、今のサンダース氏が登場するミニドキュメンタリーの配信、タイミングがあまりにも良すぎる気がしてなりません。

じつは、サンダース氏のFacebook、Aアカウントの「about」を覗いたところ、「page owner」として「Kenneth Pennington」という名前を見つけました。LinkedInなどによると、今の肩書きは「Digital Director of Bernie 2016」。つまりサンダース選対のデジタル責任者です。

その経歴は、高校時代に連邦議会のボランティア職員プログラムに参加するほどの政治好き。カリフォルニア大学サンディエゴ校在学中から、ニュース発信のためのモバイルテクノロジーブログの編集長となり、その後、デジタル広告のコンサルティング会社などを経て3年前からサンダース事務所に入ってメディア担当をしてきました。

google+のページでは「Techie,historian,political junkie」と記入しています。historianを別にすれば「政治狂いの技術屋」と自称するに足る、経歴の持ち主のように見えます。

うがちすぎかも知れませんが、彼のようなデジタルエリートともいうべき人材が画策して、今回の逮捕写真やビデオを発掘したと考えると、新聞掲載より1日早く、Bアカウントに写真が掲載されたことを含めて、いろんなことの辻褄が合いますが、どうでしょう。

一方、小泉元首相並みの歯切れのいいセリフは列挙にいとまがありません。例えば、5時間前のポストはこうです。

ーー恥ずべきことに、アメリカは西側諸国の中で子供の貧困率が最悪だ。1,500万人、率にして20%の子供が貧困状態にある。いかに、これを終わらせるか。改善のために共に立ち上がろう。

そして締めは「As one nation. As a united nation. As the United States of America.」という具合。1万人が「いいね」とし、1,200件以上のシェアがあり、420件のコメントが付きました。

こういう歯切れのよさはTwitterだと一段と良くなる感じです。「勤労者に金を渡せば、物やサービスを買う。それが新たな仕事を生む」とか「我々は世界で最も金持ちの国に住んでいるが、アフリカ系の子供の37%、ネイティブ系の47%が貧困状態にある」「メディケアや最低賃金などルーズベルトが提案したことは社会主義者のいうことだと言われた。しかしいまやこれらは国の構造に織り込まれている」「民主社会主義の意味することは、公立大学の授業料を無料にすることが、この国では正しい」などなど。これが1日10本ほども次々繰り出されるのです。

こうしたツィートのほとんどが1000回以上、場合によっては1万回以上もリツィートされて拡散してゆきます。Pennington氏の力量を感じてしまいます。

長くなったので省略しますが、こうした反響を呼ぶ作りは< We’re gonna make a political revolution. We’re gonna transform America.>と冒頭に掲げたInstagramでも、<I believe America is ready for a new path to the future.>と掲げるTumblrでも強く感じました。メッセージがとても簡潔で強いのです。

今回、クリントン氏のソーシャルメディアも覗いて回りました。サンダース氏のものほど熱心に見なかったきらいがあるので見落としがあるかも知れませんが、おおまかに言って、Facebookの「友達」数で負けていませんし、Twitterのフォロワー数では、サンダース氏を上回るほどです。

違いは、クリントン氏の投稿に対する「いいね」やシェア数という反応が大体において、だいぶサンダース氏より弱いということです。広がりが少ない。大雑把に言って、半分から3分の1程度。これはTwitterやInstagramTumblrでも似たような傾向です。

ただし、クリントン氏には強い味方がいます。夫のビル・クリントン元大統領の人気です。ヒラリー氏が大統領になれば、ビル氏は「First Lady」ならぬ「First DUDE(俗語で野郎という意味らしい)」になると書かれた白板に前で微笑む元大統領の写真には1万の「いいね」が付き、8千件以上もシェアされました。コメントも4千件近く。チェルシーさんのTwitterにも100万人以上のフォロワーがいます。サンダース氏の足音が近づけば、家族の出番が多くなるかも知れません。

民主党サウスカロライナの予備選は今度の土曜日です。今週、若き日のサンダース氏の逮捕写真とビデオで注目を集めることに大成功したサンダース陣営、どこまで迫れるでしょうか。

 

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