テレビ番組はネットで見る時代の幕開け

Share Button

ニューヨーク・タイムズ(NYT)で「メディアの方程式( MEDIA EQUATION)」と題するコラムを書き続ける専門記者David Carrさんにしても寝耳に水のビッグニュースだったようです。彼を驚かせたのは、先週、立て続けに発表されたケーブルチャンネル大手のHBO、大手ネットワークテレビ局CBSのストリーミング配信への参入です。

彼は19日のコラムの冒頭でこう記します。「変化はとてもゆっくり現れると思っていた。でも、出し抜けに起きた。断固とした姿勢で。そうした時代が来ることは知っていた。でも、こんなに早くじゃないはずだった」

米国ではケーブル局、衛星テレビ局などPay TVへの加入契約が1億件を越え、局側は視聴者が見ないようなチャンネルも沢山バンドルして料金は平均月90ドル。Pay TVは我が世の春を満喫しているとのことで、有力チャンネルであるHBOや、Pay TVから再送信され、再送信料をたんまり得ているCBSも一緒に美味しい目にあっているはず。それがどうして!というわけです。

Carrさんの先のコラムの見出しは「The Stream Finally Cracks the Dam of Cable TV」。ストリーム配信は最終的にはケーブルテレビのダムを崩しちゃう!という刺激的なものですが、Pay TVに深く馴染んだ米国では大ごとなのでしょうし、世界中に影響を及ぼすかも知れません。日本語メディアは殆ど報じていないので記録しておきます。

HBOの正式名称はHome Box Office。Box Officeとは映画館や劇場のチケット売り場のことですから、家庭で映画が見られるというのがウリで始まり、現在はオリジナルドラマ、ドキュメンタリーやスポーツも流しています。日本のWOWOWのような有料チャンネルなので、CMは入りません。Pay TVの局によるようですが月額料金は15ドルほどのようです。それを、15日に、「2015年からストリーミング配信も行う」と出し抜けに発表したのです。

実はHBOには、<HBO GO>というサービスがあって、Pay TV加入者はストリーミングでも見られるサービスを行っています。それを、来年からPay TV加入者でなくてもOKにしようというのです。まだ、詳細は明らかではありませんが、C-netは、「月額料金はPay TV同様15ドルか?」と報じています。

で、その翌16日には、CBSが「今日から月6ドルのストリーミング配信を始めた」と、こちらも出し抜けの発表をしました。名称は<CBS All Access>。リアルタイムの番組視聴だけでなく、見逃し番組は翌日から視聴でき、6500本におよぶ番組アーカイブがオンデマンドで利用できます。

<Try 1 week free>とあるので、クリックしてみましたが、日本からではダメと表示されました。当初のサービス地域はシカゴ、ロサンゼルス、ニューヨークを含む14箇所だけだそうです。

先に記したように、HBO、CBSともPay TV経由で十分な利益を上げているはず。なのにどうしてインターネットの世界に飛び込んだのか。いくつもの見方がありますが、その一つが、NYTが指摘しているような「NetFlixへの対応」という見方です。

NetFlixは、当初、DVDのレンタルを郵送で行っていましたが、ネットでのストリーミングにすることで世界中を相手にビジネスを広げ、NYTの別の記事によると現在の契約者は5070万人(うち、米国内は3630万人)に及び、昨年の総収入は44億ドル(4500億円)だったそうです。

NetFlixの人気の秘密は、今週のMonday Noteの記事によると、同社には300人以上の分析チームがあって、コンテンツがどう選択されているかを解析し、契約者に最適なものを毎日、推薦するシステムになっていて、契約者と直接繋がっているのが強いからだと指摘しています。

つまり、コンテンツ内容では似通っているHBOは、ライバルNetFlixの侵食に備えるためにも、視聴者に直接アプローチできるネット配信に加わり、これまでPay TVでHBOを見ていなかった何千万もの視聴者を開拓しようとしているというわけです。

その背景には、Millennials(ミレニアルズ)と呼ばれる幼い頃にインターネットの爆発に遭遇した、現在18歳から34歳までの世代のテレビ離れが強まっていることがあります。これも、たまたま、先週にComScoreが公表したのですが、「The U.S.Total Video Report」に、その傾向がはっきりと示されました。

具体的には、パワーポイントによるレポートをご覧頂きたいのですが、一例がこれです。

スクリーンショット 2014-10-21 13.49.54 ミレニアルズ世代で、テレビをいわゆるTVセットでしか見ないという人は55%しかいません。35歳以上とは際立って異なる傾向です。そして、もっと特徴的なのは、インターネットでしかテレビを視聴しないという人が13%もいます。8人弱に1人がそうなのです。この傾向は、おそらく18歳以下ではもっと顕著なことでしょう。

それがHBOをネットに向かわせ、それ以上にCBSが危機感を募らせた大きな要素でしょう。実は、ABC、NBC、Foxという他の大手ネットワークが提携している動画配信サービスのHuluに、CBSのみが参加していません。なぜ、参加しなかったかは知りませんが、そうした事情も、今回の決断に関わりがあったのでしょう。

同じく人気チャンネルのESPNなども追随しそうなどという観測もあり、テレビ映像のdistributionルートは大きく変化するその始まりのように見えます。

日本では、ようやく、連続ドラマなどの見逃し番組の無料配信に向けて在京キー局が共同して取り組むという構想が出てきたそうですが、米国に比べてなんとも平和な感じです。でも、若者のテレビ離れの傾向はおそらく日米共通なはず。

Carr記者はこう記しています。「新たな競争と新たな消費習慣を認識するのを拒否したあとで、新聞、書籍、音楽全てが完敗したのを、記者として見てきた。守りを固めるために武装し、旧来のアプローチに倍賭けして目を塞ぎ、野蛮人が撤退するのを願うのは、いい考えではない」

 

 

 

 

 

No Comment

No comments yet

Leave a reply