重点をテレビからモバイルへ移し、2200人も削減する公共放送局

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ひところ、米新聞界を中心に「デジタルファースト」というフレーズが流行り、最近は「モバイルファースト」などと言われているようですが、なんと、テレビ局でも、同様のスローガンを掲げ、重点をテレビ番組からモバイルに移すと経営者が宣言する放送局が現れました。

カナダの公共放送局CBC(カナダ放送協会)です。日本で言えばNHK、英国ならBBCに相当する著名テレビ局のドラスティック方針転換です。そしてモバイルシフトに伴って向こう5年で1,000人から1,500人を退職させるそうです。しかも、CBCは今春687人の削減予定を発表したばかりですが、これに上乗せして実施するとか。

合計すると、5年先には最大2,200人近くがクビを切られてるということです。ちなみに、CBCの局員数は地元紙トロント・スターの4月の記事によると正規職員だけで6994人だそうですから、3人に1人近くの割合になります。恐ろしい数字です。

そうせざるを得ない理由は、一言でいえば財政難です。カナダではNHKのような受信料制度はなく、政府からの資金援助がベースで、2006年からCMも出すという公共放送としては珍しい収入構造なのですが、政府からの援助が削られ、一方で、最近は視聴者がモバイルに移行し、CM収入も伸び悩んでいるという事情があるようです。

CBCの社長兼CEOのラクロワ(Hubert Lacroix)氏がその方針を明らかにした(多分、記者会見の)内容がCBCのサイトにアップされています。

それによると、「CBCは優先順位をテレビからデジタル、モバイルに転換する」「それに伴い、スタッフ、夜ニュース、社内制作番組を減らす」「これからはモビリティで前進する」「大規模な人員削減で財政的に持続可能な組織にする」「国内各地の放送局は閉鎖しないが、夜ニュースは90分から30分になる(場所によっては60分)」「日々のニュースとラジオは自前で作るが、ドキュメンタリーはもう自前では作らず、外部に委託する」「オフィススペースも半分にする。CBC本社ビルを買ってくれる所があれば喜んでテナントになる」・・・・・

ラクロワ氏は弁護士出身のようですが、なんとも大胆な方針です。この方針が出る数日前に、NHKの2013年度決算が公開されました。受信料6,345億円で182億円の黒字だとか。

一方、CBCの財務は、CanadianEncyclopediaによると、政府からの援助が11億カナダドルで、広告集などが7億カナダドル弱。計18億ドルは日本円にして1,700億円あまり。これで7,000人の正社員を抱え、カネのかかるテレビ番組を内製するのは大変でしょう。ちなみに、受信料収入が6千億円を越えるNHKの職員数は、NHKオンラインに「1万292人」とあります。

まあ、これでは、まともなテレビ番組作りもままならないような状況がなんとなく分かります。そこでカネと人手がテレビ番組制作よりかからないモバイルファースト、デジタルファースト的な方向が出されたように見えますが、そこで、米国で人気のグループブログBoing Boingの共同編集長でもあるカナダ人作家Cory Doctorow氏がGuardianでこう主張しています。

「税金で作った膨大なコンテンツを網羅したCanadian Creative Archiveを作ったらどうだろう。コピー、シェア、リミックスやり放題のシステムを作ることこそ、デジタルファーストの考えに添うものだし、CBCの悲惨な状況を何がしか救う道じゃないか。世界的に公共放送はアーカイブに限定的なアクセスしか認めていないけど、それを打開し、世界各局のアーカイブをつなぐ素晴らしい試みの先駆けになればいい」と。

世界の公共放送局で例外的に経営が順調なNHKにこそ考えて欲しいような提案です。

 

 

 

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