NYタイムズが印刷を止める日は近いかも

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昨日は、半日以上、ニューヨーク・タイムズ(以下NYT)の「Innovation」と題する、平和博さんの言う「編集局デジタル改革レポート」の96ページに及ぶ原文に遭遇し、釘付けになっていました。

実は、サイトに掲載した記事が、ソーシャルメディアなどを介してどのくらいアクセスが膨らむかを記事ごとに公開しているBuzzFeedのViral Dashboardを”勉強中”に、”Exclusive”、特ダネ!と銘打った「New York Times Internal Report Painted Dire Digital Picture」という16日付けの記事が目に止まったからです。

どこが特ダネかというと、BuzzFeedがレポートの原本を入手したのです。NYTの改革チームが編集局幹部宛に出した <Our recommendations>とする11ページに及ぶ文書はそれ以前に流出し、それをもとに5月8日にCapitalが報じていて、平さんも12日のブログで解説を交えて紹介していました。ぜひ、ご一読下さい。

平さんの解説がとても行き届いていたので、てっきり、これが改革レポートの全てかと思っていたら、とんでもない勘違いだったわけです。

実はBuzzFeedの入手したレポート原本はモノクロで、不鮮明な所もあり、5ページが欠損など、どうやらアナログ的にコピーしたもののようです。しかし、BuzzFeedから遅れること半日で、ライバルMashableが、デジタルの原本と思われるカラーの完全版を入手し、アップしました。新興デジタルメディア間の競争も凄い。

11ページが96ページになっても、当然ながら主張のトーンが変わることは有り得ませんが、内容が具体的になり、表現も厳しくなっている印象です。

文章によるExecutive Summaryに続く<Disruption:A  Quick  Overview   of  the  Competitive  Landscape>のくだりは、米国のメディアの最近の動きと、置かれた状況をとても分かりやすくまとめています。とくに、「破壊的イノベーション」の概念を図入りで詳しく紹介するというようなことは、日本の社内文書では有り得るのかなあ、などと感心しました。

同じく、「Cheat Sheet」と題して、NYTを取り巻く新興メディアを中心とする当面のライバル12社に付いての簡単な紹介は、まさしくカンニングペーパーで参考になります。これも、新興メディアに疎いかもしれない幹部向けでしょうか。

多分、ほんの一部しか理解していないと思いますが、紙で伝統を作って来た新聞がどういう発想転換をしなければならないかで参考になることも随処にあります。

まず、25ページの表になっているのですが、「今の編集局のアプローチは、クオリティジャーナリズムのみ」、これを根本的に変えなければならないという主張です。

表に具体的に記していますが、記事のプロモーション、配信、タギング、SEO、速報、バイラルhit、パッケージ、さらに読者が簡単に素晴らしい記事に出会えるディスカバリー、パーソナライゼーション、コネクションなどの開発などなど、やることは山ほどあると。

編集局の強化に関しては、「もはや、我々の競争相手はデジタルで遅れをとる他の新聞ではない」と新興メディアへの警戒感を露わにし、「彼らはテクノロジートレンドを取り入れるのが早いので、我々の優れたジャーナリズムより牽引力を持つことがしばしば起きる」と分析し、NYTもDigital First Newsroomにならなければならないと強調しています。

ここで主張された「Digital First」というのは、単に、紙の新聞の締切時間や配達時間を考慮しないで、どんどん、最新ニュースを出そう、という単純なことではないようです。

たしかに、新聞社の収入は、依然として紙の新聞発行によって支えられているけれど、実際にNYTの記事に接している読者の圧倒的多数はすでにデジタルだということです。そこに目を向けてデジタル重視で行かなければ、将来は開けないという指摘です。

81ページにグラフで示しているのですが、紙でNYTに接する人は500万人。これに対し、Facebookのファンが500万人、Eメール購読者600万人、Twitterのフォロワー1100万人、NewAlertの読者1300万人、モバイルでの読者2000万人、パソコンの読者3000万人という現実です。(ここの数字は当方がグラフから読み取った概数)

こうした現実を踏まえ、「Digital Firstの意味する一番のことは、新聞のあらゆる拘束から自由な、最善のデジタルレポートを生み出すこと」だという主張です。

もちろん、このためには、スタッフの意識転換だけでは済まず、優秀で多種多様なDigital Nativeなタレントを早急に採用するのが緊急の課題だと提言しています。BuzzFeedやMashableなどに去った4人のデジタル担当者の声も記し、NYTの体質転換を強く求めています。

紹介できたのは(英語力欠如のせいで)ほんの一部ですが、このレポートはNYTザルツバーガー会長の御曹司がリーダーになってまとめただけに、会長の意思も十分にはいっているのは間違いないでしょう。

なにせ、ザルツバーガー会長は、2010年9月のロンドンでのメディアサミットで「2015年にNYTは紙の新聞の印刷を終えるか?」と尋ねられ、それを直接否定せず、「時期を具体的には想定していないが」と前置きして「We will stop printing the New York Times sometime in the near future」と答えた人物ですから。

その意味で、NYTの急展開は早いかもしれません。

なお、蛇足ですが、冒頭のBuzzFeedの特ダネ記事のViral Dashboardでは、ソーシャルメディアなどからのアクセスが、元記事の4.6万に対し40.5万もあって、トータル45万に達し、social lift率は9.9倍になるそうです。

 

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