ワシントン・ポスト、ベゾス流”全国紙”への道

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アマゾン創業者のベゾス氏が買収した米ワシントン・ポスト紙が、注目すべき新たなプログラムを公表しました。先週のことですが、とても興味深い戦略に思えるので遅ればせですが記録しておきます。

その内容は、ワシントン・ポストが、中堅クラスで、かつ課金モデルを採用している地方紙6紙と提携し、その地方紙の有料読者はワシントン・ポストのデジタルコンテンツに無制限のアクセスが出来るというものです。

ワシントン・ポストは昨年夏から、自社サイトへの無料アクセスは月間20本までに制限し、それ以上のアクセスを望む場合は有料というメーター制を採用しています。ただし、紙の読者には無料で無制限アクセスを認めていますので、提携6紙の有料読者はワシントン・ポストの紙の読者と同じ待遇が与えられるということです。

こういう好条件をワシントン・ポストは金銭的には全く見返りなしで提供するというのです。提携6紙の経営側から見ると、既存有料読者にメリットを与えられるのは勿論ですが、ブランド力のあるワシントン・ポストのコンテンツが無料で読めると宣伝出来るわけですから、有料読者の勧誘、拡大の武器にもなるでしょう。しかも、自社の支出なしに。

ちなみに、ワシントン・ポストのコンテンツをパソコン、スマホ、タブレットなどで無制限に読めるデジタルプレミアムの料金は4週あたり7.99ドル、年間79ドルです。

それでは年間79ドル分を無料で提供するという一見豪気なワシントン・ポストの狙いは何でしょうか。冒頭に紹介したワシントン・ポストのPRブログで、同社のStephen P.Hill社長はこうコメントしています。「expose The Post to a wider audience than ever before.」ーーーポスト紙はかってなかったほど多くの読者の目に触れることになる。

ワシントン・ポストは政治報道を中心にブランド力は高いとされますが、配達されるのはワシントンDCとその周辺の州に限られていて、新聞「紙」離れが進む中で部数も縮減し50万部程度しかありません。2年ほど前に「紙」の値上げをしましたが、評判は散々で、さらに部数を減らし、大した収入増につながっていないようです。部数が減れば、広告収入も当然、減ります。

紙の収入減を補うにはデジタル収入の増大が欠かせないわけですが、その柱はウェブ広告。これも、アクセス数にほぼ比例します。しかし、メーター制の有料システムを導入した以上、アクセス数の増大はあまり見込めないでしょう。

そこで、採用されたのが、地方紙有料読者への自社サイトの全面公開ということなのでしょう。6紙の部数はフィナンシャル・タイムズの記事によると合計100万部あまり。その有料読者数は明らかではありませんが、今回の措置で、地方紙の有料読者が増えて、ワシントン・ポストのサイトへのアクセスが増えれば、広告収入の増大につながるでしょう。かくて、「win win」の道筋が見えました。

しかも、6紙との提携という、この実験的なプログラムは始まりに過ぎません。ワシントン・ポストの先のブログでは、こう宣言しています。「 This program is a way for us to work with newspapers and other print and digital partners around the country 」ーーー(課金システムさえ持っていれば)新聞社にかぎらず全米のどんな企業とも組むのだと。

ハーバード大のニーマンジャーナリズムラボの記事も書いています。「うまくいけば、このモデルは、殆どゼロコストで、何ダース、数百に拡大されよう」と。

部数で全国紙のUSA Today、ウォールストリート・ジャーナル、ニューヨーク・タイムズの後塵を配しているワシントン・ポストの試みは、もしかしたら、ベゾス体制のもとで生まれた、全く発想の異なる「全国紙」への道なのかも知れません。

なお、このプログラムは5月にスタートするそうで、当初の参加6紙は以下の通りです。

The Dallas Morning News, Honolulu Star-Advertiser, The Toledo Blade, Minneapolis Star Tribune, Pittsburgh Post-Gazette and the Milwaukee Journal Sentinel.

 

 

 

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