STAP細胞”事件”を巡るネット集合知のパワー

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昨16日夜のフジテレビ「MRサンデー」のSTAP細胞特集を見て、仰天しました。

それは、小保方晴子さんが主著者で投稿した英科学誌「Nature」と、その権威で並ぶという米国の「Science」誌のジョン・ボエイナン(Science誌サイトにはJohn Bohannonの名がある)記者が、デタラメな論文を書いて、世界304の科学誌に送ったら、その6割で採用されたというのです。

それほど、科学論文の真贋を見極めるのは大変ということなのでしょう。では、理研の小保方晴子ユニットリーダーを主著者とする「STAP細胞」論文が、なぜ、こんなに早く、そのズサンさが明らかになったのか。それはやはりインターネットならではの集合知だったと言えるのでしょう。

理系の素養はからきしなので、これまでは新聞記事を読んだり、理研の記者会見を見たりしていただけで、ネット上の動きは難しそうなので敬遠してフォローしていませんでしたが、たまたま同じ16日の読売朝刊に「論文検証にネットの威力」というまとめ記事が載っていて、大筋を掴めました。

ただし、この記事はサイトには載っていません。そこで、この記事を参考にしつつ、STAP細胞論文のズサンさがネットで暴かれた経緯を整理してみます。

論文がNatureのサイトに掲載されたのは1月29日でした。世界中にセンセーションを巻き起こしたわけですが、その日に、早速、批評記事が、科学者の情報交換サイトというPubpeerに掲載されます。それがこの記事元記事のブログはこちら

筆者は米カリフォルニア大学デービス校医学部のPaul S. Knoepfler博士。細胞学者である博士は「読んだばかりでは、アヤシイという赤旗はあげない」としながら、「他の研究室でも再現可能か」「人間の細胞でも大丈夫か」「大人の細胞でも大丈夫か」など6点を明らかにすべきだ、と注文します。とくにここに記した3点は必須だ、と。

この投稿へのアクセス数は、今のところ4万7千件を越えるほど関心を集めます。そして、すぐさま、多くのコメントが寄せられるのですが、2月5日に写真投稿サイトimgurにこの写真が掲載されます。(imgurとは集合知で掲載写真を厳選するユニークなサイトです。過去記事はこちら

これがすかさず同じ日にPubpeerのコメント欄に載ります。<Here is a false-colour image of Fig. 1i:http://imgur.com/1nBfKTr> でも投稿者はこうも付け加えています。<It does seem as if somebody did not like the original “positive control” (according to the legend).>ーー誰か気に食わない人によるのかも、と。

しかし、実際にはこれが契機になって、様々なアラ探しが世界的に広まったわけです。その流れは、FFP Investigater(論文捏造と研究不正捜査官)を自称するjuuichijigen(11jigen)さんの英語ブログ部分的な日本語訳はこちら)や、別の筆者による日本語のまとめも「世界変動展望」というサイト、あるいは「千日ブログ」などに詳しく載っていて、更新が続いています。11jigenさんのTwitterのフォロワーは1.2万人に達し、書き込みはいまも活発です。こうした充実ぶりは、いかに多くの情報がネットで発信されているかの証明でもあります。

そして、写真の使い回しに加えて、小保方さんに大きなダメージとなったのが、博士論文の剽窃。introductionの20ページほどが米NIH(米国立衛生研究所)のサイトにあるものと同じだという指摘でした。

これがどうして簡単に比較できたのかというと、大学共同利用機関のライフサイエンス統合データベースセンター特任助教・内藤雄樹さんが、10年前に開発したdifff(デュフフ)というツールのおかげのようです。独立したサイトとしてありますので、アクセスすれば一目瞭然ですが、左右のフレームに対照するテキストを貼り付けて、<比較する>ボタンをクリックすると、違ってる単語だけが青色になります。

つまり、白っぽければ、コピペのアヤシイ文書というわけです。(ちなみに、difffは、元の名称、diff (差分)fileが短縮されたものだそうです)

これを、前述の11Jigenさんが、3月11日にTwitterで「剽窃だ」と指摘し、すぐにdifff開発者の内藤さん(meso_cacase)が、「比較した結果、序論部分はコピペ」とTwitterで確認の発信をしています。

NIHの文章はネットからとれますが、小保方さんの博士論文はどう入手したのか。実情は知りませんが、2013年までは、博士論文は国会図書館に寄贈されることになっていて、2011年に博士号を授与された小保方さんの論文は、寄贈され関西館にあるとのこと。それを国会図書館の検索システムNDL OPACで突き止めたどなたかが論文の一部のコピー入手に成功したのでしょう。この貢献も一種の集合知と言えるかも。(NDL OPACで検索した結果はこれです)

以上が、ネット上での大まかな動きなのですが、インターネットでは、アナログ時代と違って大量のコピペが極めて容易になった一方で、誤った使い方には、楽になった分だけしっぺ返しも大きいことが痛感されます。今回の動きを辿ると、一歩誤ると世界中が敵になるような恐ろしさを感じるほどです。

まあ、それはそれとして、小保方さんには、是非、STAP細胞の再現に成功して欲しいという思いもあるのですが・・・

 

 

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