グーグルが1000億円出した化け物スマホアプリ「Waze」

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知りませんでした。イスラエルの会社が作ったスマホ向けのナビゲーションアプリWaze(ウェイズと発音するようです)が、すでに4500万回もダウンロードされている人気アプリだってことを。

念のため日経テレコン21で、「ウェイズ イスラエル」で記事検索したところ、朝日・読売・毎日の全国紙はともにゼロ、日経が朝・夕刊で1回づつしかありませんでしたから、ま、知らなくてもそんなに恥ずかしいことでもなさそう。

で、これに気づいたのはCNET Japanの昨日の記事「FTC、グーグルによる地図アプリ「Waze」買収に関して調査を検討か」でした。何を調査するかよくわからない内容ですが、びっくりしたのは、この日本では無名にちかいアプリの買収額が「11億ドル」ということでした。

ウォール・ストリート・ジャーナルの記事によると、これはグーグルの買収金額としては4番目に高額だとか。3番目が2006年のYouTube買収で16億5千万ドルですから、グーグルが、このWazeの将来に相当大きな期待をかけているのがうかがえます。

さて、そのWazeで何ができるのか。グーグルは素早く日本語サイトを作って説明しています。分かりやすいアニメビデオもあります。


要するに、このアプリ入りのスマホを車のダッシュボードに設置、目的地を入力してドライブすると、このアプリが、車の速度をGPSで得られた場所情報とともにWazeのサーバーに自動的に送信するというのが基本のようです。

サーバーでは、利用者から集まったこの2つの情報から、どの道が渋滞してるか、あるいは空いているかをリアルタイムで解析し、利用者に一番早く行けそうなルートを提示するそうです。

このほか、自動ではありませんが、故障車があるとか、速度監視カメラがあるよとか、警官がいるよというような情報も場所とともに簡単に送れ、それを利用者が共有できるとか。そうした情報を送れば送るほどポイントが溜まり、送って貰える情報も多くなる仕組みだそう。

このWazeについてニューヨーク私立大学教授で、著名ブロガーでもあるジェフ・ジャービス(Jeff Jarvis)氏は自身のブログBuzz Machineの6月11日の記事で絶賛しています。

で、こう述懐しています。「実は何十年も前に、Waze風のソーシャル交通サービスのビジネスプランを書いた。当時はスマホがなかったから携帯電話から報告するシステムだった。報告した人にはポイントを供与、無料で情報が送られるが、フリーライダーからは徴収するシステムだ。しかし出来なかった。だから(Wazeがグーグルから手にした)10億ドルは私にはない

最後のフレーズには大笑いでしたが、私が思い出したのは2000年前後に、あちこちで構想され、フィールド実験が行われた”インターネット自動車”のことです。

例えば、ワイパーが動いているかどうか、それが早くかゆっくりかを無線ネットワークで位置情報とともに送れば、どこで雨が降っていて、それが大雨か小雨かという天気図が出来るというもの。

あるいは、Wazeと同様に車の速度を位置情報とともに送信して、街なかの渋滞状況を知るという試みも名古屋や横浜で行われた記憶があります。しかし、それらには専用のセンサーや通信端末を必要としていましたから、一般化しなかったのでしょう。経産省も随分、委託研究費を出したようですが、それを生かして「10億ドル」の宝の山にたどり着く日本人もいなかったわけです。

私の思いは過去に飛びましたが、メディア研究者として名高いJarvis先生の思いは、同じ11日の別の投稿でメディアはWazeから何を学ぶべきかへと発展していました。

実は、Jarvis教授は6月5日に、世界新聞大会での講演で以下のように述べていることを、大会に参加した在英のジャーナリスト小林恭子さんのレポート「デジタル・ファースト」の次に来るものは?~世界新聞大会から」で知りました。

「新聞をはじめとするメディアはコンテンツを作る商売をしてると考えてきたが、発想を転換してニュースの提供をひとつのサービスと考えること」「これでメディアと市民の関係性が変わる。読者がどんな人で、何を読みたがっているかを知り、これに答える形でメディアが情報を提供していく」

この限りでは、分かったようでよく分からなかったんですが、教授のブログで理解が少し進みました。記事の前段でWazeのプラットフォームとしての特徴を挙げたあとで、ローカル新聞が学ぶべきことを並べています。

・あなたのコミュニティの人々が知ってることを互いにシェアするプラットフォームを使う。自らが邪魔してはならない。

・ユーザーの住まい、職場、学校などを知りえたら(これはsmall dataでbig dataではない)、より関連のある手持ちコンテンツを提供できる。

・より、関連のある広告が提供できる。あなたにあったセールありとか。

・自分たちのリソースをどこに用いたらいいかが学べる。ある会社に多くのユーザーがいるならそこを取材するとか。

・個人に関わるsmall dataは、より関連性を導き、大きな価値を持つということだ。

そうか、個人情報を集めて商売に生かすってことは、NSA(国家安全保障局)も民間も、そして時にプライバシーを言い立てる新聞も、これからは当たり前ってことか。

考えてみれば、Wazeの恩恵を受けることだって、自分の自宅や毎日通う先、立ち寄り先などを全てを生活パターンを含めて公表し、蓄積されるってことの見返りだ。グーグルはこの蓄積情報が莫大な利益を生むと思って11億ドルも支払ったわけだ。いずれ、蓄積情報を解析して、個人を丸裸にした上で、興味を持ちそうな広告を、走ってる場所場所に応じて流すつもりなのだろう。

日本では早くから着目していながら、発展しなかったのは、プライバシーの観点から、ってこともあったのだろうか。

 

 

 

 

 

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1 Comment so far

  1. ををつか on 6月 26th, 2013

    インターネットが普及した当初も,みんなで渋滞情報を書き込んで共有しようとか,交通取り締まり情報を共有しよう,なんてサイトが幾つも立ち上がりましたが定着した所は皆無ですね。色々な原因が有ると思いますが,交通情報などに関しては,公的情報提供が万全である,てな事が言えると思います。昔はカーラジオから聞こえてくる交通情報位しか渋滞情報を知る事が出来ませんでしたが,今はカーナビを積んでいれば,VICSサービスなどで行こうと思う道順の渋滞情報をリアルタイムで知る事が出来ます。ユーザは全く受け身で便利さだけを享受できます。
    どうも我々日本人は自分たちで新しいサービスを開発しよう,そのサービスの主人公になろう,とはあまり考えないようで「お上がやれば良い」との態度を取るようです。

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