新たなネットニュース報道の模索ーTBDとCB

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あのアリアナ・ハフィントン女史によるHuffington Postと並んで経営的に最も成功しているネットニュース報道機関として知られるPoliticoを運営するAllbritton Communicationsが、近々、新たなコンセプトによるワシントンDC周辺に限定したローカルニュースサイト<TBD>を発足させるようです。発足に先立ってblogがスタートしていて、その趣旨などを説明していますが、考え方やスタイルが先日、当ブログで取り上げたハワイの<Civil Beat>(以下CBと略)に極めて似通っていて、とても気になります。もしかするとこの二つが新たなトレンドを産み出すかもしれません。

TBD(To Be Determinedの略語から命名。「今は未定だけどいずれわかる」くらいのニュアンスか)の編集長は、2004年から2009年はじめまで4年あまりwashingtonpost.comの編集局長を勤め、その間にトラフィックを倍増させたという実力者のJim Bradyです。CBの編集長がピューリツァー賞を何度も取ったロッキーマウンテンニュースの編集局長を10年以上勤めたJohn Temple。ともに既存メディアの大物だということが共通する第一のことです。ちなみに、Bradyが辞任したのはワシントン・ポストが紙とオンラインの運営を統合することに抗議してのことだったとされています。

ただし、既存メディアの大物がネットニュース機関の編集主幹や編集長に就任するのは米国ではそう珍しくなくなってきました。ワシントン政界に特化した報道で評価の高いPoliticoの編集主幹John Harris、編集長のJim VandeHeiの二人はともにWashington Postの大物政治記者でしたし、500人以上のフルタイム記者を採用して報道部門を強化しているAOLニュースの編集長にはAPの前supervising editorで、同社で28年以上働いたというベテランのMartin Steinbergが今年2月に就任しています。また、ネット報道機関として初めてピューリツァー賞を受賞したProPublicaの編集主幹Paul Steigerは元WallStreetJournalの編集局長でした。米国新聞業界はレイオフの嵐ですから、これからも多くの著名記者がネットに流出することでしょう。

第二の共通点はともにバックに大物がついていることです。CBはeBay創業者で資産数十億ドルのPierre Omidyar、TBDは10のテレビ局を擁するAllbritton Communicationsの総帥Robert Allbrittonで、お金の問題はなし。従って優秀な記者を相当数雇えることでしょう。

さて、両方に共通する最大の特徴は、既存メディアのように、記事が書きっぱなしで終わらないスタイルを採っていることです。CBの名前の由来は知りませんがPolice Beatと言えば警察担当記者のことですから、Civil Beatはさしずめ市民問題担当記者という感じでしょうから、事件事故の速報は扱いません。市民の生活に直結する様々な問題提起型の記事が書かれ、読者と議論をしたり、情報提供を受けてさらに記事を更新するという、いわばウィキペディア方式で内容を充実させていきます。

一方、TBDのポリシーは伝統的な報道記事の基本要素である5W1H(when,what,why,who,where,how)にこだわらないとしていることです。その要素が必要でないという意味ではなく、そうした5W1Hが揃わなければ記事として発表しないという既存メディアの考えにとらわれず、いくつかの要素が分かればその時その時で記事化し、あとから分かった分を追加で更新していけばよいという考えです。読者との会話は続き、情報は何時までも更新されるので「完成品」の記事はないという考えはCBのウィキペディア的手法に似通っているようです。

TBDでもCB同様、読者との会話が重視されるようで、さらにコミュニティニュースの発掘、充実のためにブロガーネットワークを構築中とのこと。さる20日には第一回目の説明会が開かれています。こうした地元の協力者との交流はCBでも重視していて、たまたまですが同じ20日に、ネット上の議論に積極的に参加している12人を編集部に招いて、Omidyar、Templeをはじめとするスタッフとの交流会が開かれています。

ただし両者には決定的な違いがあります。CBは有料会員にならなければ記事の全文は読めませんし、議論に参加することもできません。会員にならなくてもサイトにアクセスは出来ますが、記事の要約と議論の中身しか見られません。しかも料金は月19.99ドルと結構、強気に見える設定です。紙の新聞と同じようなレベルだそうですが、「高い料金を払っているのだから発言しなくちゃ損」という気分にさせる狙いもあるかもしれません。TBDは無料の予定で、ターゲット広告を展開する模様です。また、Allbritton Communication所有の24時間テレビ局NewsChannel8と連携するのでそちらかの収入もあてにしているかもしれません。テレビとの連携のためにCBSニュースの政治ディレクターだったSteve Chaggarisが経営陣に加わっているとのことで、備えは万全に見えます。果たして、議論を重視するCBの有料会員はどのくらいに達するのか、TBDがブロガーと連携してどんな速報システムを構築するのか、その行方は今後のローカルニュースサイトの有り様に多くの示唆を与えてくれそうです。

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