宅配よりネットアクセス料金が高い!新聞社登場
アメリカ東海岸、ロードアイランド州のNewport Daily Newsのことです。同紙のサイトの題字下に<America’s First Resort>とあるように、ニューポートは古くからリゾート地として知られた海辺の町です。位置的にはニューヨークから車で北上して3時間程度の所。人口はニューポート郡全体で8万人余り。部数は1万2000です。
そのローカル小新聞社が新聞生き残りのために思いついたのが、世間では無料が当たり前のニュースサイトへのアクセスが、宅配される紙の新聞より高くつくという逆転の発想。具体的に言うと、宅配は1年契約で145ドルと格安。この新聞契約者が同紙のニュースサイトにアクセスする契約を結ぶ<COMBO RATE>だと別に年100ドルが要求され、計245ドル。まあ、ここまでは分かります。その次が思い切った手口なんです。つまり宅配契約してないひとがサイトにアクセスするのはなんと年345ドル必要になります。
「ネットアクセスだけで345ドルがアホラシければ新聞を取ってね」というのが新聞社の考え。つまり4月16日のエントリーで紹介したミネソタ州セントポールのStarTribune(30万部)が、調査報道による特ダネや力を入れた企画記事はまず紙の新聞に先に載せることで紙の新聞の価値を高め、紙の部数の維持・拡大を図るという<Print First>の考えに近いですね。Daily Newsの編集長は<Newspaper First>という言葉を使っていますが。
6月4日のエントリー「新聞記者残酷物語ーネットは新聞を殺す」で書いたように、米国では記者のレイオフ、賃金・福利切り下げが続発しています。ごく最近では、あのニューヨークタイムスのグループ紙であるボストングローブでも23%の賃金カットを会社側は強行する構えです。こうした新聞苦境の中で、なぜニューポートデイリーがネット購読料を導入するかについてこう説明しています。
<新聞業界が直面する問題から得られた教訓は、社員が生み出した独占的なコンテンツをタダでだすのはまともなビジネスモデルではないということだ。もう一つの教訓はオンライン広告は多分将来にわたってニュース報道業務を支えるレベルにまでは達しないだろうということだ。そこで、ローカルニュースをただでネットに出すことは止めたのだ>
また、ネットアクセス契約が紙の宅配より高くなる理屈についてはこう説明します。
<宅配の購読料で新聞制作や宅配費が賄われているわけじゃない。紙の広告が全コストの85%を賄っているのだ。一方でオンラインの広告収入なんて知れてる。だからネット購読料が高くなるのは当たり前。紙の広告の補助がなければネットのコストは年500ドルになる>
そこで<最も魅力的な選択は宅配ということになる。つまりそれがわれわれの目指すものだ>と宣言するわけです。
と、いっても、実はこの3段階料金制はまだ実施されていません。5月18日からを導入していて、6月1日からは登録制になりましたがまだ実験期間ということで無料で利用できます。(日本からも大丈夫です)E-Paperという仕組みで、新聞紙面が画面左側に表示され、任意の記事を選ぶと、右側に拡大されて表示されます。あるいはテキスト表示も可能です。
いつからネットアクセスが実際に有料になるかは明言していませんが、経営者のシャーマン氏はハーバード大学のニーマン・ジャーナリズム研究所のインタビュービデオの中でこう答えています。(ビデオはこちら)
<実験期間中の利用者回答の中に「新聞を買えば済むことなのになんでネットに金を払うんだ」という声があった。完璧だ!それこそ我々の望むところだ>
しかし、その狙いが当たるかどうかはわかりません。特に、地方政治や社会問題を報じる個人やグループによるニュースブログが日本とは比べものにならないほど力強い動きをしているアメリカのことですから、紙にこだわりすぎると痛い目にあうおそれも十分考えられるような気がするのですが。事実、ニューポートにはすでに複数の地方政治ウォッチブログがあることですし。
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