新聞記者残酷物語ーネットは新聞を殺す
健全経営で知られる朝日新聞も日経新聞も今年ばかりは大赤字決算の異常事態だというのに、今日発売の週刊新潮には「押し紙」問題を書きたてられ、新聞業界、泣き面にハチ、前途に暗雲モクモク、みたいな状態ですが、ご存知の通り、アメリカはもっとひどい。その一例を知って暗澹たる気持ちになりました。
セントルイス・ポスト・ディスパッチ紙のことです。部数25万5千部。堂々たる中堅紙と言えるでしょう。その同紙を所有するリー・エンタープライズ社が最近、契約更改交渉に入るにあたって交渉相手のセントルイス・ニュースペーパーギルドに申し入れた条件が凄いのです。分かる範囲で箇条書きしてみます。
①3年間で給料23%カット。初年度15%、2年目、3年目は5%づつで達成。
②会社側にどんな理由ででも従業員レイオフの権限を付与。その際はseniorityを認めない。(レイオフは勤続年数の少ない順にという原則はなし。給料の高い人を自由にレイオフできるということ)
③正当な理由や苦情処理手続きなしでも従業員を最短3日前に解雇通告できる権限を会社に付与
④有給の出産休暇を廃止
⑤24週間あった無給の育児休暇を半分の12週間に(それ以上休めばクビということか?)
⑥退職者医療制度と生命保険の廃止
⑦カメラマンの社用車利用を禁止
⑧たった3か月の病欠で解雇出来るように変更。現行は18か月。
あと、年金などでよくわからないこともありますが、いやーすごいですねえ、一気にこういう労働条件切り下げを提案するなんて。ま、全部が全部、会社側の要求が通るわけではないでしょうが、これだけ次々、新聞が廃刊になったり、大幅縮小でネット専門になってる時代ですから、労組にしてもそう強く出られないでしょう。足元を見ての会社側の攻勢ですね。
以前、米国の新聞グループ・ガネットが1週間の無給休暇を強制という記事をアップしたときに、米国の記者のサラリーは意外に安いという事実を知りました。サラリーデータベースPayScaleによるとリー・エンタープライズ社員は10-19年勤続で5万8千ドルとのこと。そこから1万3千ドルも減らされた上に、いつ首切りがあっても文句を言えず、退職後のベネフィットも剥奪、というのはアメリカの新聞業界の置かれた状況がいかに困難かということであるのでしょう。
アメリカ新聞協会が最近発表した数字によれば、今年第一4半期の広告収入は昨年同期比で、オンライン広告も含めてもマイナス28%でした。一昨年同期比ではなんとマイナス40%です。このままいけば今年の新聞広告の総額は300億ドルを割ってしまいそうとのこと。ピークは2000年の487億ドルでしたからざっと4割も減ることになり、これは1987年の水準です。言わずと知れたクレイグスリストやイーベイの躍進が新聞のドル箱であったクラシファイド広告を奪っているからですね。「ネットは新聞を殺すのか」というのんびりした問題提起は6年前のことで、やっぱり「ネットは新聞を殺す」時代になった感じですね。少なくともアメリカでは。なお、アメリカ新聞業界の今年の首切り数と早期退職優遇制度による退職者の合計はちょうど1万人を超えたところです。朝日と読売の全従業員を足した数字に近い。しかもまだ半年もたっていない段階の数字です。
余談ですが、最近、経営破綻したゼネラル・モータースの場合は、同じPayScaleによると10-19年勤続で8万3千ドルとのこと。新聞業界とは比べ物にならないほど高い。しかも、事実上の国有化で若干の解雇や減給はあるにしても、企業が面倒を見てきた健康保険や企業年金はほとんど減額なし、と伝えられます。こんなんで本当に再建が出来るのか知らん。
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