新聞廃刊は独禁法違反!復刊せよ! 

またまたアメリカ新聞界の不景気話で恐縮ですが、意表を突かれる話だったので。

アリゾナ州ツーソン市のTucson Citizen(以下、シチズン)が先週土曜日の16日に最後の紙の新聞を発行、ウェブだけの新聞になりました。今年になってシアトルポストインテリジェンサークリスチャンサイエンスモニターなども紙の新聞の発行を止め、ウェブだけになっていて、それ自体はそう珍しくもないのですが、シチズンの場合、最後の日の前日15日に、州の検事総長が「廃刊」に対する「緊急差し止め命令」を裁判所に要求したのです。要するに、廃刊方針を撤回して即、復刊せよということです。

新聞には公的な性格があるといっても純粋な民間企業。その民間企業の事業中止はまかりならんという司法の介入って一体?????

実は、これはこれまで何回かこのブログで紹介したアメリカ新聞界独特のJOA(Joint Operatng Agreement)に関わることだったのです。JOAは一つの市に複数の新聞がある場合、各新聞社は編集部門だけを独自に持ち、広告、印刷、配達などは共同で作った別会社に任せてしまうというものです。これで経費節減というわけですね。

JOAは法律に基づくもので全米各地で行われており、片方が廃刊した場合、その読者はもう一方が引き継ぐのが一般的なようで、先月廃刊したコロラド州デンバーのロッキーマウンテンニュース(RMN)の場合も、RMNの21万部の大半をJOAのパートナーだったデンバーポストが引き継いだとみられます。アメリカの地方都市では他に新聞の選択肢がないからです。

で、ツーソンの場合もシチズンとアリゾナデイリースター(以下、スター)がJOAを結んでいて、編集以外の業務はそれぞれの親会社であるガネットとリーエンタープライズが50%づつ出資しているTucson Newspaper Inc.(TNI)が行っていました。こちらはもちろん黒字。シチズンの廃刊でJOAは解消されますが、TNIという会社は残ります。スターはおそらくシチズンの大部分の部数を吸収するでしょうから、代行して行っている販売や広告分野の収入は変わらないし、手数がかからない分、経営上メリットが生じるでしょう。

すると、TNIに出資しているガネットは、赤字のシチズンの面倒を見なくて良くなった上に(編集に関わるすべての費用がゼロになる!)、TNIから従来通り、ちゃんと利益配分が受けられることになります。それは独占状況を自ら作り出して利益を得ようとするものだから独禁法違反、だから廃刊は認められない、というのがTerry Goddard州検事総長の主張でした。

その審理は18日に双方からのヒアリング、19日(いずれも現地時間)に決定があったのですが、シチズンの記事によれば、判事の判断は「シチズン廃刊によって回復不能な独禁法違反を被告が侵していることの証明が不十分だ」として、復刊につながる「緊急差し止め命令」を受け入れませんでした。しかし、これはスターの記事ですら「判事の判断は独禁法違反かどうかについては不透明」としていて、「判事の判断には失望した」とする州検事総長の出方によってはまだ一波乱ありそうです。

それにしてもかっては30近くあったJOA、残るは6箇所のみ。ひとつの日刊紙しかない市や地域がほとんどになりました。まあ、ネットでニューヨークタイムズでもワシントンポストでも全米の新聞、いや世界中の新聞が読める時代ですからあまり痛痒を感じないのが当たり前になっていくのでしょうか。

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