Times Reader 2.0って新聞の自殺行為かも

11日から新しくなったというニューヨークタイムズ(NYT)のTimes Readerを早速ダウンロードして使ってみて、その快適さに少々驚いている。

紙媒体としての新聞の利点はいくつかあるが、私は「一覧性」が最大の特長だと思っている。パッと開いて見て、見出しを眺めるだけでおおよそのことが 分かり、加えて、主要記事にはサマリーともいうべきリード(前文)まである。さらに見出しの大きさ、記事の配置、行数の長短などで「政治面」「経済面」 「国際面」「社会面」など各セクションのお勧め具合も容易に理解できる。また、ウェブニュースでは関心のあるキーワードに関わる記事しか読まない傾向があ るが、新聞の一覧性で、まったく知らないキーワードに出会い、引き込まれる楽しみもある。

逆に言うと、それがウェブメディアの弱点でもあった。なるほど、例えばnytimes.comのトップページに行くと重要な記事は最初にあり、フォ ントも大きめでリードもついている。しかし、記事やコラム、あるいはお知らせなどの雑多な見出しが延々と続きスクロールしてみると6画面分ほどもある。こ れは、当日分だけでなく数日分の主要記事などが詰め込まれているためだ。情報量の多さを誇っている感じだが、いささか行き過ぎの感がする。

また、ウェブメ ディアでは一つの記事があちこちのセクションに配置出来る。たとえば「音楽CDの売り上げが違法ダウンロードソフトの流行で大きく落ち、レコード会社の決算 が悪くなり、国会で取り上げられた」、というような記事があれば、政治、経済、技術、エンターテイメント、社会などの各セクションにその見出しが掲載される だろう。かくて、ウェブメディアの各セクション(カテゴリー)毎の見出し量は膨らんでしまい、とても一覧できない。

しかし、ウェブメディアにはリアルタイムで情報を更新できる速報性がある。加えて音声や動画も可能なマルチメディア機能という新聞には逆立ちしても かなわない特長がある。これに新聞の一覧性の加味を目指したのがTimes Reader 2.0のようである。残念ながらその前バージョンは試していないので比較は出来ないが、例えばビジネスセクションのトップページはこういう 画面だ。

左側の細い縦欄には各セクションへのリンク、それ以外はすっきりと「当日」の記事だけ。しかも一つの記事は新聞に載ったのと同じセクションに掲載さ れ、他のセクションには登場しない。(ただし重要記事はフロントページと重複することもある) ウェブのように2、3日分の見出しがないし、他のセクショ ンとの重複もないので見出し数は限られるから一覧性は新聞並みに高まったといえよう。各項目をクリックすれば本文に飛ぶしかけになっているのはウェブの方 式。一方でウェブの特徴を生かして更新も5分間隔でおこなうという。加えて7日間遡れるアーカイブサービス(7日分の記事をPC内に記憶させておく)があ るので、見落とし記事の検索も簡単。

もうひとつ面白いのはデモビデオを見ると 分かりやすいが、各セクションのトップページを出す代わりに重要な順に各記事がスライドショーのように左右にスクロールする仕掛けも視覚的に楽しい。各 記事 の体裁はウェブのようにページの端から端まで横1列に続くのではなく新聞のように縦3列に表示されるので読みやすいしフォントもウェブとは比較にならない ほど美しい。

しかも、この1日分の紙の新聞とほぼ同じ内容はいったん接続して同期させればコンピュータをオフラインにしてもビデオ以外はすべて読んだり見たりするこ とが出来るのがすごい。新聞の利点のひとつに携帯性が上げられるが、いまどきのミニノートPCで利用すればそんなに邪魔にならずに当日の新聞を電車の中で 読めるだけでなく、その場でオフラインのまま7日間も遡れるのだからもうこれは新聞の携帯性、あるいは保存性を超えているのではないか。

NYTはむろんビジネスとして技術開発しているので無料ではない。1週間3.45ドルということである。4週で13.80ドル。Amazonの電子 ブックリーダーKindle向けに売られているNYTのKindle editionは月13.99ドル。ほぼ同じだが、文字だけのKindle editionと比べるとTimes Readerの方が 機能的には圧倒的に優れているように見える。なお、Readerは先のデモビデオのページからダウンロードでき、現在はフロントページ、ビジネスセクション、ビデオ、写真、クロスワードなどが無料で利用できる。

NYT本社のR&Dグループを取材した同僚によると、見たこともないような様々な電子デバイスを利用する研究開発が活発に行われているという。 当然、Times ReaderのPC以外への独自の展開も想定されているのだろう。しかしそれは今でも経営の柱であるはずの「紙」の足元をすくう動きを加速させるように見 える。彼らは「紙の新聞は大事だ」とも言っているそうだが・・・・・・・

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