ラテ止め→Print First→Web First→Print First
さて、ラテ止めとはなんのこっちゃい、と思われた方が圧倒的だと思います。念のためググッて見ましたが、全くそれらしきものはありません。かって新聞社内で使われた業界用語ですが、もう死語なのかも知れません。
「ラテ」というのはかってテレビ、ラジオの番組欄を「ラテ欄」という風に使ったようにラジオとテレビの略です。「止め」というのは、出さない、ということで、要するに、新聞社の最終版の締め切り前には、特ダネなどは新聞社の関係するテレビ、ラジオ番組には流さないということです。
もし、締め切り前にラテで流れたら、競合する新聞社が特ダネに気づいて最終版に短くても書いてしまうおそれがあり、すると特ダネが特ダネでなくなるという心配と、特ダネはまず紙の新聞読者に届けたいという思いも重なって、特ダネ記事には「ラテ止め」の指示が関係部署に通達されたのです。
この考えはネット時代になっても引き継がれているようで、日本では特ダネが新聞社サイトに締め切り前に出ることは通常ありませんし、それどころか主要記事がウェブにアップされるのは、ほとんどの人が寝静まった丑三つ時あたりから以降なのが普通です。新聞の締め切りはとっくに過ぎてますし、この時間にネットでニュースを追いかけてる人はごくごく少数、まもなく数時間で紙の新聞が配達されるという絶妙な時間帯というわけです。つまり、紙の新聞優先の考えPrint Firstですね。
新聞社がニュースサイトを開設したのは1996年頃からで、このPrint Firstの考えは内外問わず、共通の考えだったのですが、わたしの記憶では2000年ごろから、シリコンバレーのサンノゼマーキュリーなどが先端技術ニュースなどを締め切り時間に捉われずにアップしはじめました。Web Firstの先がけですね。米国の新聞は今ではすっかりWeb Firstが定着しました。
日本でも一昨年あたりから産経新聞のサイトはWeb Firstを標榜していて、それなりに評判になっていますから日本の新聞社サイトも米国に右へ倣えの方向もありかと思いきや、なんと米ミネソタ州セントポールのスタートリビューン(30万部)がPrint Firstへの回帰を宣言しました。サイトに載っている編集局長ナンシー・バーンズさんの3月28日付けメモによると、趣旨はこうです。
「何年もの間、私たちは他の新聞社同様、特ダネもなにもどんどんオンラインに上げてきました。もしそうしなければ、誰かがそうしてこのネットという新たなビジネスモデルを失うと思ったからです」「それはうまく行って、たくさんのアクセスをもたらしました。でも私は我々の全てのコンテンツを無料で提供していることに疑問を抱いたのです」「これからも紙の新聞を配るなら紙の新聞に価値を与えなければと思って、我々の新聞で最良のコンテンツはまずは紙の新聞購読者に最初に届けるという実験を始めたのです」(we began experimenting with giving some of the best of our journalism to you, our paying print customers, first.)
このPrint Firstの実際がどうなっているのかは、この段階ではわかりませんでしたが、つい先日、彼女がジャーナリズム関連の著名ブログReflections of a Newsosaurに寄せたコメントで概要が分かりました。ネットに上げないのは、調査報道による特ダネ、企画記事、掘り下げた人物紹介記事、連載記事など。日曜版では、一番の記事はその日にはネットに上げず水曜日にしているそうです。で、日曜版についてはいずれ各セクション毎に最低ひとつは紙でしか読めないようにしたいとか。
狙いはジリ貧の部数維持、むしろ部数増を狙ってのことでしょう。ただしまだ2週間しか経っていないので部数にいい影響を与えているかどうかは「まだ分からない」と彼女は言っています。同時に、新聞社の置かれた厳しい状況を踏まえ「我々みんなが違う風に挑戦すべきだと思う。失敗したって失うものなんかないんだから」と言い切っています。このネット時代に逆行するかの如き決断に社内の反対も多かったようですが、さて、結果はどうなるのか。もし、部数維持に効果があるようなら、それは米国の新聞だけでなく日本の新聞社サイトの運営にも影響を及ぼすかもしれません。
Comments(1)
新聞を購読していないネットユーザーの立場で言えば
時代に逆行、ちゃんとニュースを流してね・・・ですが
客観的に言えば、愚かさにやっと気づいたのか・・・ですね
市長になる前にブルームバーグが
新聞がネットでニュース速報を争っているのを
著書のなかで、こう、あざ笑っていました
ニュースはコモディティで
スポーツイベントのように囲い込みできない
しかも経済ニュースは時は金なりだが
一般ニュースに換金性はない
従ってネットでニュースを有料で販売できるのは
一社独占の時期だけで
ライバルがあれば、無料になっていく
いくら早くやっても収入はほとんど期待できず
投資するほど損害を拡大するという話でした
アメリカのニュースサイトは
ブルームバーグの予想どおりの展開で
先行していたトリビューンが倒産したりで
目もあてられません
日本でも
日経はがんばっていますが
虎の子の会社の公告を
こともあろうに自社のサイトに奪われ四苦八苦
挙句にメディアが広告局を吸収しました
内なる破壊者にトロフィーを与えたようなもので
自社の状況を冷静に分析できているのか疑問に感じました
ブルームバーグの予想が正しければ
ネットを加速した新聞社はつぶれ
ネットからうまく撤退できた会社は残る
そんな未来もあるかもです
スタートリビューンは
正しい道に戻ったのかも知れません